生まれる場所と死ぬ場所〜ビーチ〜

「絶対に帰って来い!!!」
とおるくんが言ってくれた言葉を頼りに

殺意と優しさを抱えて吉祥寺に22時すぎに帰ってきた。

僕の表情は確実に出来上がっていたんだと思う。

スタジオで会うなりとおるくんは
「良い顔してんなあ!!」って…
ありがとう

スタジオのドア閉めて、叫んだ。
くそぅ…しぼりだした…


狂気とか殺気とか歪とか裏切りとか
そこら辺の感情を混沌とさせて僕は29日にライブをするんだと思う。

別れた彼女の新しい彼氏が僕の知り合いのバンドマンだった。

彼と29日はタイバンとかしなきゃいけない。
こういうドラマを神様は平気な顔して作ってくる。

街で見かけたら殺しちゃうよなあ。


僕が完全にマイナスの爆発力でやってはいけないことをやりそうな時、とおるくんは助けてくれる…1番やばいところから引っ張り出してくれる。


あとから聞いた話だと、
むーちゃん「もっちー大丈夫?!」
とおるくん「大丈夫!!今、必死にスタジオで練習してるから!」

って心配してくれたむーちゃんととおるくんが交わしたやりとりがあったらしい。

僕は本当に嬉しかった。
いつも迷惑かけてしまってごめん。


スタジオから出ると、ようへいがいた。


なんだかようへいはゲームの話を電話越しにしていた。好きなものの話をしてる時はやっぱり良い顔だ。

竜巻旋風脚のことを「タツマキ」と呼んでいた。

電話しながら、こちらの完全に出来上がった表情をみて笑っていた。
ありがたかった。やさしいな。

僕が僕であるためにわざわざ集まってくれたんだ。

みんなで車に乗った。深夜1:00くらい…

僕はわりとすぐに眠りについてしまった。
行き先も知らないまま…

少し目が覚めた時、コンビニにとまってた。

運転してたとおるくんが寝てた。疲れてるんだ…
それなのに無理してくれてんだ。

窓越しからようへいが立ち読みしてるのを確認した。なんかかっこよかった。

僕が寝てる間にどこまできたんだろう。

なんかその瞬間が好きなんだ。

向かう場所は同じで目的は同じなんだけど、
そこまでの過程の中でみんなそれぞれの時間を過ごしてる時間…

気持ちよくなってまた眠ってしまったよ。

記憶の片隅でふたりが銀杏BOYZの話してるのが残ってる。
雨も降り出してた。寒かったもん少しだけ。

もちー!!
ついたよ!
目が覚めるとスピーカーから銀杏BOYZのアルバム【BEACH】がかかってた。妙に窓の外の風景とマッチしてた。

どこかわかるー?

僕は全くわからなかった。どこなんだろうここは。

とりあえず血圧が上がってきたら外に出てみよう!

僕たちは歩いた。


すぐにここがどこだか思い出した。
去年夏前にとおるくんと行った海だった。

その日からふたりはバンドに対しての意識だったりいろんなものが変わってくきっかけになった場所だった。

「やっぱりここかなーって思って!!」

僕たちが本当の意味で始まった場所に連れてきてくれたんだ。

砂浜におりて、みんなで叫んだ!!
風が強くてすごく寒かった。

「テンションあがってきたー!!!」
とおるくんが服を脱ぎ出した。

僕もからだが脱ぎたがっていてよーへいとみんなでまっくらなビーチで服を脱いだ。

みんなで一斉に走り出した。

その時ふと、とおるくんにブラックライトを渡された。わけがわからずスイッチ押してみた。

裸のふたりの身体には

とおるくんには
[生きてれば]

よーへいには
[なんでもできる]


と書いてあった。

ちんこにもしっかりと蛍光塗料が塗られていて、発光していた。

僕は暗闇に任せて涙こぼした。

ほんの1分くらいの出来事だった。
スローモーションでビーチを3人で裸で走っている景色がこびりついた。
一生忘れない。当たり前だ。


このふたりは僕のヒーローだった。

僕はまた助けられた。
いつも助けてもらってばかりだ。


そのまま朝日が登るのを3人で待った。

水平線からの朝日ではなかったのだけど、
すごく美しかったんだよ。

トンビが自由に飛んでた。
僕もあれだけ羽ばたかずに空を飛ぶ方法を知りたかった、風に乗りたくなった。

そしてさっき裸足でビーチを走り回った時の足跡が残っているのを発見した。

良かった。僕生きている。

彼女は風、消えてしまった。

海で僕たちはずっと歌をうたってた。

それだけは本当。




誰もいない海
私は今生きている