こんなこと
ちょっと待って!!
お父さんが運転席から俺に1万円をさしだした。これで一週間くらい飯でも食えるだろ!もってけよ!
俺はお父さんを親父って呼んだことない。
これからも俺はずっとお父さんって呼ぶと思うし…
音楽やりたくてやりたくて、
お父さんとの仲がどんどん悪くなっていった。
というか、俺が一方的に距離を感じてたのかなあ。
口癖で、
やりたいことやるなら勝手にしてもいいから、もう俺は知らないから絶対に犯罪だけは起こすなよ!
って言われてきた。
去年の8月から一人暮らしを始めて、
自分がどのくらい家族に甘えて生活してきたのか、改めて実感したよ。
色んなことが初めてで、毎月どのくらいお金がかかるのかもわからなくて気がついたら家賃は滞納、電気、ガスも止められたり…
電車乗る切符無かったり、スタジオ入るお金も借りたり…ご飯食べれなかったり…
たまに家に帰ると、迷惑そうにしてるように見えたりして、お父さんがいない時に帰ろうかなって深夜に帰ったりしてたこともあった。
結構この関係を自分は寂しいなって思ってた…
弟は今年の春から就職して、
妹も大学生になってバイト始めたり、少しずつ自立していくところを見ている反面、
バンドっていう将来の見えないことを続けてる俺のこと、お金がなくて生活すらままならない俺のことを煙たがっているんだなあって思ってた。
長男なのに本当にごめんね!って…
でも色んな人に俺は助けてもらってるよ。
そして、音楽もひとりぼっちでやってるわけじゃないんだよ!
ずっとそのことを伝えたかった。
俺ひとりだけの人生じゃないんだよ!って…
今日実家に帰ってお父さんと話をした。
お前いつまでそんな生活続けるんだ?
人に迷惑ばかりかけて…
ごめんなさい!
でもみんなに助けてもらってるよ。
もういい加減に見切りつけて、ちゃんと就職しなさい。
ごめん!まだ頑張りたいよ。
とにかく人に迷惑をかけたりすることだけは本当にやめてくれ。
ごめんなさい…
変われるように頑張るから。あと少し…あと少しだけやらせてください。
いろいろとしっかりするからさ!
…
…
…
とにかく飯食ってないんだろ!
食べてからバイトに行きなさい!
うん!ありがとう。食べるね!
あ!お父さん、今日国分寺まで送っていってもらえたりするかな?
ちょっと予定あるから帰ってきてから送る!待ってなさい!
わかった!!
…
…
こんな会話をした!
なんか久しぶりだった。
小学校のころ、習い事の空手に行く時もこんな会話してたなあ…
お父さんが帰ってきてから、
車のなかでは弟の就職の話とかお母さんの働いてる保育園の話とかした!
国分寺駅が近づいてきて、
少し寂しくなった。なんでかっていうと、いつも見ていた建物が壊されていて、駅が遠くからでも見えるくらいになっちゃってたから。
弟も妹もお母さんもお父さんもこの街もどんどん変わっていたこと。寂しかったの。
駅に着いて、ありがとうってお父さんに言ってドアを閉めようとした時に
ちょっと待って!って引きとめられた。
財布から1万円を出してくれたのを見て、いいよ!って言ったけど、手に握り込んでくれて、飯でも食えるって言ってくれた…
うちのお父さんはすごく口下手…
パソコンに俺のやってるバンドの音源が入ってるのも知ってる。
本当に心配してくれて、本当に応援してくれてるのはお父さんなのかもなあって思った…
お父さん!
俺は今ひとりじゃないよ!
みんなに支えてもらってバンドやってる!
あと少しだけ俺のこと見ててほしい!!